【アスミカケル】打ち切り！ジャンプで格闘技漫画が難しい理由とは？

2024年2月、「週刊少年ジャンプ」で連載されていた格闘技漫画「アスミカケル」が32話で打ち切りとなりました。

「火ノ丸相撲」の川田先生による本作は、総合格闘技（MMA）を題材にし、リアルな技術描写や熱いドラマが魅力でした。しかし、人気が伸び悩み、連載終了という結果に。

なぜ「アスミカケル」は打ち切られてしまったのか？ そもそも「ジャンプで格闘技漫画が成功しにくい」と言われる理由とは？この記事では、打ち切りの要因を分析しつつ、今後の展開の可能性についても考察します。

「アスミカケル」が打ち切りに…その理由とは？

筋トレしたらアスミカケル読むか。
この神マンガを打ち切りにしたジャンプはほんとバカ pic.twitter.com/hvemBt6aTi

— せりざわ☀️ (@homura_takakamo) April 7, 2024

2024年2月、「週刊少年ジャンプ」で連載されていた総合格闘技（MMA）漫画「アスミカケル」が32話で打ち切りとなりました。

本作は「火ノ丸相撲」の川田先生による作品で、リアルな総合格闘技の描写と迫力ある試合展開が魅力でした。しかし、人気の面で苦戦し、惜しくも短期間での終了となってしまいました。

なぜ「アスミカケル」は打ち切りという結果に終わってしまったのか？ ここでは、ジャンプにおける掲載順位の推移、読者層との相性、そして作品の展開スピードや試合描写に焦点を当て、その理由を詳しく分析していきます。

ジャンプでの掲載順位と人気の推移

「週刊少年ジャンプ」では、作品の人気は読者アンケートの結果に大きく左右されます。人気のある作品ほど誌面の前方に掲載され、順位が下がると打ち切りの危機が高まります。

「アスミカケル」は連載開始当初こそ注目を集めましたが、掲載順位は次第に下降。中盤以降は後ろの方に配置されることが増え、最終的には打ち切りラインを超えることができませんでした。

序盤で強いインパクトを与えることができなかったことが、大きな要因の一つと言えるでしょう。特に「ジャンプ」のバトル漫画は、開始直後に読者の心をつかむことが求められます。「アスミカケル」は丁寧に物語を展開するスタイルだったため、勢いのある作品と比較すると、出遅れた印象がありました。

読者層とジャンルのミスマッチ

「週刊少年ジャンプ」の読者層は10代の少年が中心です。そのため、ジャンプのバトル漫画には、わかりやすい必殺技や超人的なアクションが求められる傾向があります。

一方、「アスミカケル」は総合格闘技（MMA）というリアル志向の格闘技を題材にしており、試合の駆け引きや技術的な側面が細かく描かれていました。格闘技ファンにとっては魅力的な要素でしたが、ジャンプのメイン読者である若年層にとっては少しハードルが高かった可能性があります。

また、総合格闘技は打撃や寝技、関節技など多様な要素が絡むため、試合の展開が地味に映ることもありました。少年漫画においては、派手なエフェクトや必殺技の応酬が人気を集める要素となるため、リアル路線の「アスミカケル」はジャンプの読者層と完全にはマッチしなかったのかもしれません。

展開のスピード感と試合描写の課題

「アスミカケル」は、MMAの試合をリアルに描くことを重視していたため、戦いの駆け引きや技の応酬が細かく表現されていました。しかし、試合展開のテンポが速すぎる場面もあり、戦いの熱さが十分に伝わる前に決着がついてしまうこともありました。

また、MMAはルールが複雑で、多くの技術が絡むため、読者にとって試合の展開がわかりづらいという問題もありました。たとえば、関節技や寝技の攻防は、初心者にとっては地味に感じられることがあり、読者が直感的に楽しむことが難しい部分もあったのではないでしょうか。

さらに、ジャンプ作品では「必殺技」や「ライバル関係のドラマチックな演出」が盛り上がるポイントになりますが、「アスミカケル」はその点での工夫がもう少し必要だったのかもしれません。主人公・二兎の技や戦い方に、より特徴的な要素があれば、もう少し読者を引きつけられた可能性があります。

このように、「アスミカケル」の打ち切りには、ジャンプの読者層とのミスマッチや掲載順位の低迷、試合描写のスピード感など、さまざまな要因が絡んでいたと考えられます。

「アスミカケル」のような格闘技漫画がジャンプで生き残れない理由

「BAKUDAN」
魁！男塾の宮下あきら先生がボクシング漫画描いたらおもしろくないわけない！
(2巻で完結)

#ジャンプそんな漫画あったな選手権 pic.twitter.com/OYOConDBDN

— Daisuke (@daisuke57mp) January 9, 2025

「アスミカケル」の打ち切りは、作品単体の問題だけではなく、「週刊少年ジャンプ」という雑誌の特性とも深く関係しています。

実際、これまでジャンプで連載された格闘技漫画の多くが短命に終わっており、ジャンプにおいて格闘技ジャンルは「鬼門」とまで言われています。

では、なぜジャンプでは格闘技漫画が成功しづらいのか？ 過去の事例や読者の嗜好をもとに、その理由を考察していきます。

過去の打ち切り作品と共通するポイント

ジャンプでは、これまでにボクシングや柔道、総合格闘技をテーマにした作品が何度も登場しましたが、長期連載に至ることはほとんどありませんでした。

例えば、1980年代から90年代にかけて連載されたボクシング漫画「KID」や「BAKUDAN」、近年では「ドリトライ」などが短期で終了しています。

これらの作品に共通するのは、「リアルな格闘技の描写を重視しすぎたこと」「ストーリー展開がゆっくりすぎたこと」「読者層に刺さるキャッチーな要素が足りなかったこと」です。

ジャンプの読者は、スピード感のある展開や、わかりやすい強敵との対決、インパクトのある必殺技などを求める傾向があります。格闘技漫画はこうした要素を組み込みづらく、他のバトル漫画と比較して人気を獲得しにくいのです。

読者が求める要素とのズレ

ジャンプのメインターゲットは10代の少年たちです。彼らが求めるのは、直感的に楽しめる派手なバトルや、主人公の劇的な成長物語です。

しかし、総合格闘技（MMA）はリアルなスポーツであり、勝敗が実力だけでなく、ルールや戦略に左右されることも多くあります。そうした点が「少年漫画としての爽快感」に欠ける原因となってしまうのです。

また、ジャンプのバトル漫画には「友情・努力・勝利」という王道のテーマが求められます。

格闘技漫画は「努力しても勝てない現実」や「戦略やルールで負ける」といったシビアな展開になりがちなため、読者にとってストレスを感じる要素が増えてしまうこともあります。

特に「アスミカケル」の場合、主人公・二兎の戦い方はグラップリング（寝技）に重点を置いていました。寝技の攻防は細かく、視覚的な派手さに欠けるため、ジャンプ読者にとってはやや地味に映ってしまった可能性があります。

他誌なら成功の可能性はあった？

ジャンプでは成功しづらい格闘技漫画ですが、他誌であれば結果は違ったかもしれません。

例えば、リアルな格闘技を題材にした作品で成功したものとして、「グラップラー刃牙」（週刊少年チャンピオン）や「喧嘩稼業」（ヤングマガジン）などが挙げられます。

これらの作品は、リアルな格闘技の要素を取り入れつつ、誇張した技や心理戦を組み合わせることで、エンタメ性を高めています。また、青年誌の読者層はジャンプと比べて格闘技に対する理解度が高く、リアルな試合描写も受け入れられやすいというメリットがあります。

さらに、「ジャンプ＋」のようなWEB連載の場であれば、雑誌の人気競争に左右されず、じっくりと作品を展開することができたかもしれません。

このように、ジャンプでは格闘技漫画が成功しづらい理由として、「読者層とのミスマッチ」「スピード感のある展開の難しさ」「試合描写の地味さ」などが挙げられます。他の雑誌やWEB連載であれば、もう少し長く続けられた可能性もあったかもしれません。

「アスミカケル」の魅力と評価

リクエストの火ノ丸相撲の國崎チヒロ！
相撲場所の舞台かっこいい！ pic.twitter.com/iAS5pGjegU

— あこ (@ako_hbtks) July 29, 2024

「アスミカケル」は、総合格闘技（MMA）をテーマにした異色のジャンプ作品として、多くのファンを魅了しました。

打ち切りという結果にはなったものの、本作の魅力が色褪せるわけではありません。リアルな格闘技描写、前作「火ノ丸相撲」との関連性、そして熱狂的なファンの支持など、本作が読者に与えた影響は大きかったと言えます。

ここでは、「アスミカケル」の特徴や評価について改めて振り返ってみましょう。

リアルなMMA描写と迫力の試合シーン

「アスミカケル」の最大の魅力は、総合格闘技（MMA）のリアルな描写にあります。打撃、組み技、寝技といったMMAの多様な要素を取り入れ、現実の試合さながらの駆け引きを描いた点は高く評価されました。

特に、試合の中で見られる「間合いの取り方」や「技の攻防」は、一般的なジャンプのバトル漫画とは一線を画しており、実際のMMAファンにも支持されるクオリティでした。

また、作中では相手のバックボーンや戦い方のスタイルがしっかりと描写されており、単なる力勝負ではなく、戦略や心理戦が重要視されていました。これにより、各試合ごとに異なる展開が生まれ、読者を飽きさせない工夫がされていました。

ただし、そのリアル志向が逆に「派手な必殺技の応酬」を好むジャンプ読者には馴染みにくかったという側面もあります。一般的なジャンプバトル漫画のような誇張された演出が少なかったため、読者層とのギャップが生じてしまったのかもしれません。

前作「火ノ丸相撲」とのつながり

本作の作者・川田先生は、以前に「火ノ丸相撲」を連載し、人気を博しました。「アスミカケル」では、その「火ノ丸相撲」の世界観とつながる要素が散りばめられていました。

特に注目されたのは、前作の登場人物である國崎千比路とその娘OKOMEの登場です。これにより、「火ノ丸相撲」と「アスミカケル」が同じ世界でつながっていることが示唆されました。

また、前作では相撲という伝統競技が題材でしたが、「アスミカケル」では総合格闘技という現代スポーツが描かれ、より幅広い格闘技の魅力を伝えようとする試みがなされていました。

こうしたクロスオーバー要素は、「火ノ丸相撲」のファンにとって嬉しいサプライズとなりましたが、逆に「アスミカケル」単体の作品としての個性を確立するうえで難しさもあったかもしれません。前作の影響を受けすぎずに、新規読者をもっと引き込めるような工夫が必要だった可能性もあります。

熱狂的なファンの支持と惜しまれる声

「アスミカケル」は決して広い層に爆発的な人気を得たわけではありませんが、コアなファン層を獲得することには成功しました。

特に、MMAに詳しい読者や、リアルな格闘技の駆け引きを楽しめる層からは高評価を得ており、「ジャンプらしからぬ作品」として愛されました。

打ち切りが決定した際には、SNS上でも惜しむ声が多く見られました。「もっと続いてほしかった」「他誌なら成功していたのでは？」といったコメントが相次ぎ、連載終了を悔しがるファンも少なくありませんでした。

もし「アスミカケル」がジャンプ＋や青年誌で連載されていたら、より長く続き、違った形で評価されていたかもしれません。それほど、本作にはポテンシャルがあったと言えるでしょう。

このように、「アスミカケル」はジャンプでは成功しづらいジャンルながらも、リアルな格闘技描写や「火ノ丸相撲」とのつながりを活かし、熱狂的なファンを生み出した作品でした。

「アスミカケル」の続編はあるのか？

アスミカケル4巻発売おめでとうございます〜！！🐺🐰 pic.twitter.com/oaBXa90GWg

— ひゃく (@hyakult) May 2, 2024

「アスミカケル」は、2024年2月に「週刊少年ジャンプ」での連載が終了しました。しかし、物語のテーマやキャラクターの成長を考えると、まだまだ描かれるべきエピソードは多く残されています。

ジャンプでの打ち切りは残念な結果でしたが、近年では別のメディアやプラットフォームで続編が展開されるケースも増えており、本作にも再び光が当たる可能性があります。

ここでは、今後の展開として期待できるポイントについて考察していきます。

ジャンプ＋や他誌での再開の可能性

近年では、「ジャンプ＋」や他のWEB漫画プラットフォームで連載を続ける作品が増えています。「アスミカケル」も、こうしたプラットフォームで復活する可能性があるかもしれません。

ジャンプ本誌ではアンケート至上主義のため、読者の支持が得られない作品は短期間で打ち切られる傾向があります。しかし、WEB連載ならば一定の読者層を獲得できれば継続が可能であり、より自由な表現ができるメリットもあります。

また、総合格闘技（MMA）は若干マニアックなジャンルであるため、ジャンプよりも青年誌のほうが合っているかもしれません。

例えば、「ヤングジャンプ」や「モーニング」、「ビッグコミックスピリッツ」のような雑誌なら、じっくりとストーリーを展開することができるでしょう。

さらに、最近では「ジャンプ＋」発の作品がアニメ化されるケースも増えており、もし「アスミカケル」がWEBで再開されれば、新たな展開が期待できるかもしれません。

川田先生の次回作への期待

「アスミカケル」の打ち切りは残念でしたが、川田先生の実力は十分に証明されています。前作「火ノ丸相撲」はアニメ化もされ、多くのファンを獲得しました。

川田先生の描く格闘技シーンは、迫力があり、技の理論や戦略がしっかりと描かれていることが特徴です。そのため、次回作でも格闘技をテーマにした作品が描かれる可能性は高いでしょう。

また、もし新作を手掛ける場合、「アスミカケル」のキャラクターや設定を活かした作品になるかもしれません。例えば、「火ノ丸相撲」の世界観が「アスミカケル」に繋がっていたように、新作でも関連性を持たせることで、シリーズとしての広がりを生むことも考えられます。

「アスミカケル」がこのまま終わってしまうのか、それとも別の形で復活するのかはまだ分かりません。しかし、コミックス最終巻の描き下ろしエピソードやWEB連載の可能性、さらには川田先生の次回作など、今後の展開には期待が持てる要素が多くあります。

まとめ｜「アスミカケル」打ち切りの背景と今後に期待すること

そういえば、アスミカケルの色紙届きました！！嬉しいぜ！！#アスミカケル pic.twitter.com/7uyBHap2ER

— 紫鈴 (@shirinraka) April 21, 2024

「アスミカケル」は、総合格闘技（MMA）をテーマにした異色のジャンプ作品でした。リアルな技術描写や熱いストーリー展開が魅力でしたが、わずか32話での打ち切りという結果に終わってしまいました。

打ち切りの要因としては、ジャンプにおける格闘技漫画の厳しい環境、読者層とのミスマッチ、試合展開のテンポの問題などが挙げられます。

特に、ジャンプでは派手な必殺技や超人的な戦いが好まれる傾向があり、リアル志向のMMAが大衆受けしにくかった点が影響したと考えられます。

しかし、「アスミカケル」は一部の熱狂的なファンを獲得し、作品の完成度も高く評価されています。最終巻には描き下ろしエピソードが収録されることが決定しており、物語の補完や新たな展開の可能性が期待されています。

また、最近ではWEB漫画や他誌での再開という選択肢も広がっています。「ジャンプ＋」や青年誌など、より適したプラットフォームで続編が展開される可能性もゼロではありません。

そして、川田先生の次回作にも大きな期待が寄せられています。「火ノ丸相撲」に続き、今作でもリアルな格闘技の魅力を描き出した川田先生が、次にどのようなテーマで挑戦するのか、ファンの関心は尽きません。

続編やスピンオフの可能性を期待しつつ、今後の展開を見守りたいと思います。